『償い』
- 作者: 矢口敦子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2003/06/01
- メディア: 文庫
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今週、地元の書店では文庫の売上1位です。
ミステリーとしても夢中で読めるし、
“人の肉体を殺したら罰せられるのに
人の心を殺しても罰せられないのですか?”
というテーマに引き込まれる。
その意味での“償い”。
人の心の泣き声が聴こえるという特異な能力を持つ中学生の少年は、
そのあまりの泣き声の大きさに耳を塞ぎたくなる。
そして
“そんなに不幸なら、その人生を終わらせてあげた方が
その人が楽になる”
と考えるようになる。
こんな言葉を吐かれたら、相手が納得する反論ができるだろうか?
陳腐な言葉しか浮かばない。
「ダメなものはダメ!」
などと言ってしまいそうだ。
そして弱者が次々に殺される事件が起きる。
すべて大きな悲しみを抱えた人達だ。
少年は幼い頃悲惨な事件に巻き込まれ、その時に少年の命を救った医者が、
偶然少年と再会する。
そして次第に少年に疑惑の目を向けていく。
少年は殺人鬼なのか?
自分は殺人鬼の命を救ったのか?
唯一の善行だと思った行為がとんでもない不幸を招いてしまったのか?
殺人者の家族、自殺者の家族、戦争という名のもとの殺人、死刑制度での殺人・・・
自分の人生には遠いと信じ込んでいる(幸せだし浅はかだけど)これらの事に、
少しでも思いを馳せることは、やっぱり大事だと思う。
そうじゃないと、知らず知らずに勝手な思い込みや差別を生んでしまうと思う。