「おやすみスプーン」   正津 勉

おやすみ、スプーン
わたしはおまえをそっと掌にうけて
なんと囁いていいのか、もうわからない
掌にあるのは、オブラートの函だけ
おやすみ、スプーン
わたしはおまえをひゃと舌にのせて
なんと祈ればいいのか、もうわからない
舌にあるのは、空っぽのコップだけ
おやすみ、スプーン
わたしのあのこはわたしを見すてて
どこへ行ったものやら、もうわからない
だからもうね、後生だからおやすみ
おやすみ、スプーン
 
 
何度となく読み返しています。
この詩を教えてくれた宮川さんに感謝。